日本でタブー視されてきた「コミンテルン」「工作員」
戦いはなおも続く。 シリーズ!日本人のためのインテリジェンス・ヒストリー⑦
『日本は誰と戦ったのか』で紹介しているように、アメリカのルーズヴェルト民主党政権内部にソ連・コミンテルンの工作員・協力者が多数潜り込み、アメリカ政府の政策に影響を与えていましたが、実は全く同じことが戦前の日本政府に対しても行われていました(詳しくは拙著『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』PHP新書、2017年参照)。
ところがわが国では、戦前の日本政府や軍部を非難するだけで、ソ連・コミンテルンとの「インテリジェンスの戦いで敗北した」という痛苦な反省がありません。そのため安全保障について熱心に議論をする有識者たちの間でさえ、もっぱら憲法九条や防衛体制の整備ばかりが議論され、インテリジェンスの必要性はほとんど論じられてきませんでした。
しかし、インテリジェンスの戦いは今なおロシアや中国共産党政府、そして北朝鮮との間で続いているのです。そこで2012年に発足した第二次安倍政権は戦後初めて日本としての国家戦略を議論する国家安全保障会議、通称日本版NSCを創設し、その下に世界各国の内情を調査・分析する対外インテリジェンス機関を設置しようとしています。
その背景には、北朝鮮による拉致問題に取り組む中で、北朝鮮の工作員たちによる対日秘密工作に対抗する必要性が生まれ、アメリカ、イギリス、韓国など外国の対外インテリジェンス機関との連携を迫られるようになったことがあると思います。
(『日本は誰と戦ったのか』より構成)
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